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今の時代に求められるIR担当者とは?(2)

アクティビストの目線で自社事業の分析ができるIRO 前回、「今の時代に求められるIR担当者」についてHBR(ハーバードビジネスレビュー)の記事を紹介しました。 その中で特に注目したいのは 4. Sounding the alarm つまりアクティビストを始めとする投資家の動きを察知するスキルです。 記事の中ではこのように述べています。 「 IROs must be able to master analytical models as well as white papers written by activists that argue for an alternative business portfolio scenario for the company.」 つまり投資家の分析モデルの理解はもとより、普段からアクティビストの白書などを読み込んでいていること。 出所:アイ・アールジャパン 注:20年は6月22日時点 自社の事業ポートフォリオに投資家から「物言い」が入った場合、どのような代案を出せるかをあらかじめ経営陣とディスカッションしておくこと、は備えになるのではないでしょうか。 コロナ渦でアクティビスト活動が活発化する中、常に投資家と繋がり、経営陣に早期に警鐘を鳴らす「ゲートキーパー」役ができるIROの居る企業といない企業の違いは大きいと思います。 「アクティビストの株主提案が過去最高に、コロナ禍でも活動の手緩めず」 出典:ブルームバーグ

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IRトレンド

年の初めに寄せて
皆様にとって健やかで穏やかな一年になりますように。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 元日の地震で被災された皆様、ご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 2024年は元日から日本にとって悲しいニュースが続きました。 このような天変地異を目の当たりにしたときの人間の無力さ、そして普段では当たり前に思っていることがどんなに有り難いことなのかを改めてかみしめています。 東京証券取引所では4日から商いが始まりました。 企業活動も本格的に始動しています。日本経済、ひいては日本企業にとって2024年はどんな年になるのでしょうか。 2023年からの流れから気をつけておきたいことがあります。 それはアクティビストの活動です。 インパクト投資家へのヒアリングで、今年少なくとも2社のアクティビストファンドが日本オフィスを開設すると聞きました。 アクティビストといってもファンド(投資家)だけとは限らずまったく業種の違う企業からの買収を仕掛けられることも可能性としてはあります。 その対策としてどのようなことを留意すべきなのかということが、IR戦略を考える上で鍵になってくると思われます。 どんなスタイルのアクティビストであれ、そもそも事業家ではないため、企業の経営陣とは「違う言語を話す人」と最初から位置づけるほうが良いと思います。 つまり議論の前提が違う。 真摯な対応をして、何度も面談を重ねても、結局理解し合えないことがままあります。 やはりここは「同じ言語を話し」アクティビストの手の内を熟知している、資本市場の専門家にアドバイスを請うのが最も理にかなっていると考えます。 その上で、買収防衛策を使うのか、撤廃するのか、資本政策の方向性をどうするかなど、経営の根幹に係わる部分での議論を社内で深めていく必要があると思います。 出所:Bloombergニュース  アクティビストに目を付けられる企業に共通している特長があります。それは開示が乏しいことです。一見矛盾しているように思えますが、情報開示をしてしまうと、その情報がまんべんなく公平に世の中に行き渡るため「潜在化していない情報の価値」がなくなるためです。開示を進めるほど、特に敵対的な買収を仕掛けようとするようなアクティビストへの対策となるのです。上場企業のIR担当者にネガティブなニュースほど、迅速な開示をお勧めするのはそのためです。 以下の円グラフは米国の上場企業に向けてアクティビスト投資家がどのような株主提案をしてきたかを示すものです。米国と日本企業を単純比較は出来ないものの、参考になるかもしれません。 The most frequent activist investor demand involved in 28% of campaigns since 2006 has been for companies to separate its business. 2006年からの統計によると、最も積極的なアクティビスト投資家のうち28%が企業に「事業の分離」を求めてきた。 アクティビスト投資家から要求された価値創造の施策(2006年以降、2,142社累計) Value creation demands from activist investors( 2,142 campaigns since 2006) Source: FACTSET,…
ESG投資は今どうなっていて、どこに向かっている?
以前「ESGは死んだ」という英国FTの記事を紹介しました。 そして、日本のメディアでも同様の報道がありました。 「ESGが消えるべき3つの理由 米で政治化、欧州は常識」(出所:2023年7月8日、日経新聞) 10月23日のFTで、改めて「ESGは死んだ」系の記事が紹介されています。タイトルを訳すると「ESGは救いようがない。早く消えて」といった感じでバッサリと切り捨てています。 ESG is beyond redemption: may it RIP by Aswath Damodaran (Source:October 23 2023 edition of FT Online.) 欧州、米国では2019年8月にDWS(ドイツ銀行の資産運用部門)、続いてブラックロックのサステナビリティ投資責任者による相次ぐ内部告発を皮切りに、欧米においては金融機関による相次ぐグリーンウオッシュ、企業によるバリューウオッシュがメディアに取り上げられています。ESGへの逆風が吹きまくっています。また不正をせず、ルールを守って真面目にコツコツやってきた投資家や企業の間にも「ESG疲れ」が見られます。 でも、ESGは不要だ、と切り捨ててしまって良いのでしょうか。ESGは今どうなっていて、どこに向かっているのでしょう。 IR担当者としては、グローバルにおけるESG投資の大まかな流れは常にアップデートしておくことをお勧めします。投資家との温度感がずれてしまうからです。インパクト投資家からのヒアリングを行い私の見解をまとめてみました。 まず、ESG不要論に飛びつく前に、なぜこのようなESG不信が起きたのか、要因を分解して考える必要があると思っています。 ①ESG投資は「死なない」:過去25年以上にわたって概念として進化を続けてきたESG。概念そのものが急に「死ぬ」、「消える」とは考えにくい。ESG投資は進化の途中にある。 ②ESGデータの疑義性:要因分解をすると、問題は格付機関が投資家に提供する「ESGデータ」の疑義性にあるのであって、ESGのコンセプトそのものが問題なのではない、ということです。問題は、大手格付会社のESGレーティングの計測方法は明らかにされていないことから、透明性・公平性の担保が相当難しい点にあります。ESGデータの疑義性と、ESG投資の原則を混合して議論するのはちょっと違うと思っています。 ③ESGデータの透明性を担保し、投資家が安心して投資判断に使えるようにする必要があり、misrepresentation (あたかもそこにあるかのごとく装うこと)が出来ないルール作りが急務であるということです。欧米では早くも業界ごとのESG開示に係るルールづくりなが進められています。 ④ESGファンドの選別が起こる 過去10年でグローバルの巨大投資家などが「環境や社会に良いことをしている」と旗を振って資金を集めた結果、世界の総資産の3分の1をサステナビリティ関連のマネーが占めています。短期的な利益獲得をねらうようなファンドが規制強化を嫌気し次々撤退していくのも、ある意味予想が出来たことかもしれません。 ⑤結論:淘汰を生き抜くのは「本物」だけ 上記のような流れから、私は現在ESG投資は、今曲がり角にあると考えます。淘汰のさなかにある、ということです。約半数のESGファンドが2年未満の設定をされており、順次繰り上げ償還されているとブルームバーグは伝えています。利益を確定したら早々に退散する(「なんちゃってESGファンド」とでも呼んでおきましょう)の数が新たに設定されるESGファンドを上回るとのこと。 今後、ESGを謳うファンドに課されるルールはさらに多くなることから(下記参照)それでもESGファンドとして残存する選択をしたサスティナブル投資家には志があるという証左になるのではないでしょうか。 志を持つ「本物」だけが淘汰を生き抜いていくと、大石は考えます。 ブーム去り繰り上げ償還相次ぐ、ESG投信に「異変」-設定2年未満も (出所:ブルームバーグ) [世界のESG規制]気候変動や人権など新ルールが2倍超に (出所:日経ビジネス)