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年の初めに寄せて

皆様にとって健やかで穏やかな一年になりますように。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 元日の地震で被災された皆様、ご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 2024年は元日から日本にとって悲しいニュースが続きました。 このような天変地異を目の当たりにしたときの人間の無力さ、そして普段では当たり前に思っていることがどんなに有り難いことなのかを改めてかみしめています。 東京証券取引所では4日から商いが始まりました。 企業活動も本格的に始動しています。日本経済、ひいては日本企業にとって2024年はどんな年になるのでしょうか。 2023年からの流れから気をつけておきたいことがあります。 それはアクティビストの活動です。 インパクト投資家へのヒアリングで、今年少なくとも2社のアクティビストファンドが日本オフィスを開設すると聞きました。 アクティビストといってもファンド(投資家)だけとは限らずまったく業種の違う企業からの買収を仕掛けられることも可能性としてはあります。 その対策としてどのようなことを留意すべきなのかということが、IR戦略を考える上で鍵になってくると思われます。 どんなスタイルのアクティビストであれ、そもそも事業家ではないため、企業の経営陣とは「違う言語を話す人」と最初から位置づけるほうが良いと思います。 つまり議論の前提が違う。 真摯な対応をして、何度も面談を重ねても、結局理解し合えないことがままあります。 やはりここは「同じ言語を話し」アクティビストの手の内を熟知している、資本市場の専門家にアドバイスを請うのが最も理にかなっていると考えます。 その上で、買収防衛策を使うのか、撤廃するのか、資本政策の方向性をどうするかなど、経営の根幹に係わる部分での議論を社内で深めていく必要があると思います。 出所:Bloombergニュース  アクティビストに目を付けられる企業に共通している特長があります。それは開示が乏しいことです。一見矛盾しているように思えますが、情報開示をしてしまうと、その情報がまんべんなく公平に世の中に行き渡るため「潜在化していない情報の価値」がなくなるためです。開示を進めるほど、特に敵対的な買収を仕掛けようとするようなアクティビストへの対策となるのです。上場企業のIR担当者にネガティブなニュースほど、迅速な開示をお勧めするのはそのためです。 以下の円グラフは米国の上場企業に向けてアクティビスト投資家がどのような株主提案をしてきたかを示すものです。米国と日本企業を単純比較は出来ないものの、参考になるかもしれません。 The most frequent activist investor demand involved in 28% of campaigns since 2006 has been for companies to separate its business. 2006年からの統計によると、最も積極的なアクティビスト投資家のうち28%が企業に「事業の分離」を求めてきた。 アクティビスト投資家から要求された価値創造の施策(2006年以降、2,142社累計) Value creation demands from activist investors( 2,142 campaigns since 2006) Source: FACTSET,…

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ESG投資は今どうなっていて、どこに向かっている?

以前「ESGは死んだ」という英国FTの記事を紹介しました。 そして、日本のメディアでも同様の報道がありました。 「ESGが消えるべき3つの理由 米で政治化、欧州は常識」(出所:2023年7月8日、日経新聞) 10月23日のFTで、改めて「ESGは死んだ」系の記事が紹介されています。タイトルを訳すると「ESGは救いようがない。早く消えて」といった感じでバッサリと切り捨てています。 ESG is beyond redemption: may it RIP by Aswath Damodaran (Source:October 23 2023 edition of FT Online.) 欧州、米国では2019年8月にDWS(ドイツ銀行の資産運用部門)、続いてブラックロックのサステナビリティ投資責任者による相次ぐ内部告発を皮切りに、欧米においては金融機関による相次ぐグリーンウオッシュ、企業によるバリューウオッシュがメディアに取り上げられています。ESGへの逆風が吹きまくっています。また不正をせず、ルールを守って真面目にコツコツやってきた投資家や企業の間にも「ESG疲れ」が見られます。 でも、ESGは不要だ、と切り捨ててしまって良いのでしょうか。ESGは今どうなっていて、どこに向かっているのでしょう。 IR担当者としては、グローバルにおけるESG投資の大まかな流れは常にアップデートしておくことをお勧めします。投資家との温度感がずれてしまうからです。インパクト投資家からのヒアリングを行い私の見解をまとめてみました。 まず、ESG不要論に飛びつく前に、なぜこのようなESG不信が起きたのか、要因を分解して考える必要があると思っています。 ①ESG投資は「死なない」:過去25年以上にわたって概念として進化を続けてきたESG。概念そのものが急に「死ぬ」、「消える」とは考えにくい。ESG投資は進化の途中にある。 ②ESGデータの疑義性:要因分解をすると、問題は格付機関が投資家に提供する「ESGデータ」の疑義性にあるのであって、ESGのコンセプトそのものが問題なのではない、ということです。問題は、大手格付会社のESGレーティングの計測方法は明らかにされていないことから、透明性・公平性の担保が相当難しい点にあります。ESGデータの疑義性と、ESG投資の原則を混合して議論するのはちょっと違うと思っています。 ③ESGデータの透明性を担保し、投資家が安心して投資判断に使えるようにする必要があり、misrepresentation (あたかもそこにあるかのごとく装うこと)が出来ないルール作りが急務であるということです。欧米では早くも業界ごとのESG開示に係るルールづくりなが進められています。 ④ESGファンドの選別が起こる 過去10年でグローバルの巨大投資家などが「環境や社会に良いことをしている」と旗を振って資金を集めた結果、世界の総資産の3分の1をサステナビリティ関連のマネーが占めています。短期的な利益獲得をねらうようなファンドが規制強化を嫌気し次々撤退していくのも、ある意味予想が出来たことかもしれません。 ⑤結論:淘汰を生き抜くのは「本物」だけ 上記のような流れから、私は現在ESG投資は、今曲がり角にあると考えます。淘汰のさなかにある、ということです。約半数のESGファンドが2年未満の設定をされており、順次繰り上げ償還されているとブルームバーグは伝えています。利益を確定したら早々に退散する(「なんちゃってESGファンド」とでも呼んでおきましょう)の数が新たに設定されるESGファンドを上回るとのこと。 今後、ESGを謳うファンドに課されるルールはさらに多くなることから(下記参照)それでもESGファンドとして残存する選択をしたサスティナブル投資家には志があるという証左になるのではないでしょうか。 志を持つ「本物」だけが淘汰を生き抜いていくと、大石は考えます。 ブーム去り繰り上げ償還相次ぐ、ESG投信に「異変」-設定2年未満も (出所:ブルームバーグ) [世界のESG規制]気候変動や人権など新ルールが2倍超に (出所:日経ビジネス)

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ESGは終わった?(後編)

1.ESGは終わった?(前編) こちらからご確認ください。 2.ESGは終わった?(後編) 個人的にはそうは思いません。記事では政治や利権にまみれた「ESG」という言葉自体は消滅し、当たり前の前提となる。いずれは「インパクト投資」と呼ばれるようになるだろう、と説明されています。ESGという言葉が産まれて25年ほど経ちますが、ここ10年くらいの空前のESGブームを経て、今は「反ESG」の流れがあることは理解しています。ただ、そこまで単純に説明できるものではないと考えます。 そもそもESGとは、企業分析をする際に投資家が使うスクリーニング項目のこと。日本企業の決算説明資料で「E・S・G」それぞれの取組みをプレゼン資料で紹介していますが、投資家のスクリーニング項目であるESGを発行体側が定義するのは、少々おかしく感じられます。むしろ上場企業は社会課題をどのように解決していくのかをSDGsの目標になぞらえて説明するほうがしっくりきます。つまり、発行体が社会課題をどのように解決していくのかの「プロセス」を示すのがSDGs、その状態に達するまでの「手段・手法」がESGです。 私は定期的にグローバルのESG関係者にインタビューしています。その取材を通して分ったことは「ESGは今後も無くなることはないし、今も進化の途中にある。だからESGにこれが正解というものはなく、何がベストプラクティスになり得るのか、各業界で試行錯誤しながら真剣に考え始めている。」という意見でした。欧米でのグリーンウォッシュ(ESGファンドの疑義)、バリューウォッシュ(企業開示の疑義)を経て、ESGが本来の機能を取り戻すためにはどうしたらよいのかを、当局、取引所、投資家、上場企業、アカデミアで議論して行く局面に来ています。 そもそもの話ですが、ESGの本来の機能とは何か?と聞かれたら、私は「社会課題を解決する事業や企業にグローバルのお金の流れを向けること。」と答えます。その実現のために、ESGという評価項目が必要になるのです。したがってESGというテーマをまるごと「終わった」と言い切るのは、ESG業界の現状には即していないのかもしれません。 3. IR担当者は日本語に対応する英語の情報で「裏取り」を。 グローバルな投資家と対峙する経営陣やIR担当者にお薦めしたいことがあります。日本語の報道だけでなく、英語の情報で裏を取ることです。3.11の時の原発事故の報道にしても、Chat GPTの情報にしても英語の情報のほうが圧倒的に早く、豊富です。残念ながらグローバルな世の中において、日本語の情報は相対的に「少ない」のです。カバレッジが小さいものだけを見て物事を判断するのではなく、裏を取りに行く気持ちで英語の記事や説明に照らすことが実は重要です。この積み重ねで投資家の議論がズレることを防げると思うのです。 ただ、膨大な英語資料を読むのは大変ですので、そんな時はChat GPT、DeepLやGoogle翻訳を活用できるのではないでしょうか。やりようはいくらでもあるので、英語での「裏取り」をぜひお薦めしたいです。(大石) 参考リンク:ESG投資とは?SDGsとの違いや企業の取り組み例を紹介(出所:THANKS GIFT)

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ESGは終わった?(前編)

最近SNSニュースの見出しに目を引かれました。ご覧になった方も多いかもしれません。ESGは終わったのでしょうか? この記事を読んで私の思ったことを3点ほど書きます。 ESGが消えるべき3つの理由 米で政治化、欧州は常識(出所:日経新聞) 「ESG」の3文字が消える日(出所:日経ビジネス) 1.なぜ今、この議論なのでしょうか。 ESGが政治や利権にまみれ、ブラックロックやドイツ銀行(DWS)のもとサステイナビリティー担当者による内部告発が相次いだのはもう2年前のこと。現在では、欧米を中心に次のフェーズに進んでいます。(詳しくは後半で。) ちなみに、Financial Times で同様のタイトルのニュースが掲載されたのは2022年6月です。 「RIP ESG? 」Harriet Agnew, Asset Management Editor JUNE 13 2022 (出所:Financial Times) 弊社ブログで2021年8月と9月に、ブラックロックとドイツ銀行の内部告発の詳細をそれぞれ解説しています。よかったらご覧下さい。 2021年8月 ブラックロックのサステナブル投資の前・責任者:「ESGは危険なプラセボ(偽薬)である」(出所:CNBC News) 2021年9月24日 「金融機関のESG投資の看板に偽りあり?DWSの元サスティナブル投資責任者への単独インタビュー」 YouTube:Desiree Fixler – Why has all the money going into ESG not addressed many urgent issues? (出所:TBLI) (後編へ続く)  #ESG #終わった#サステイナブル #SDGs #上場企業 #IR担当者 #IRO #日本株

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提言:ESG開示要請への対応について

「提言:ESG開示要請への対応について」 環境対応など、外部機関からの開示要請が増えています。 IR担当者の業務も相当に膨らんでおり最近はご相談を頂くことが多いです。 弊社の考えを「問題提起」と「提言」に分けて書きました。 IR担当者のみなさんのご意見はいかがでしょうか。(大石)

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問題提起:ESG開示要請への対応について

「提言:ESG開示要請への対応について」 環境対応など、外部機関からの開示要請が増えています。 IR担当者の業務も相当に膨らんでおり最近はご相談を頂くことが多いです。 弊社の考えを「問題提起」と「提言」に分けて書きました。 IR担当者のみなさんのご意見はいかがでしょうか。(大石)

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「このところの日本株高は楽観できない。むしろ臨戦態勢を整える時。」

最近メディアでは「バフェットも日本株式を評価」とか「外国人投資家の日本株への期待」「お墨付き」などの言葉を良く目にするようになりました。本当にメディアの報道を鵜呑みにして良いのでしょうか? 勿論、日本株に資金が入ってくるのは一般的には良いことなのですが、裏を返せば、投資家の期待に応えられない場合は失望売りから資金が一気に引いてしまうリスクを個人的に感じています。 最近投資家と話す機会を持ちました。そのなかで「なぜ日本株はここまで上昇を続けているのでしょう?それは実力に裏打ちされたものなのでしょうか?」と聞いたところ、意外な答えが返ってきました。 結論から言えば今の日本株式市場への資金流入は「消極的選択」の結果、という説明でした。中国政府の方針が国際社会のなかで孤立を強めるなか、ESGファンド、年金ファンドのアセットオーナーは、アセットマネージャーに大して中国市場からの投資マネーの引き上げを指示しているとのこと。興味深いのは、「アジア・エックス・チャイナ」つまり「中国株を除くアジア株」への投資が求められているのですが、中国株が抜けたあとのそれなりの受け皿が必要。結果として、他のアジアの投資先と比較しても地政学的リスクの低い「日本株」が資金の受け皿になっているとのことでした。 今、年金ファンドなどが求めている商品は「アジア・エックス・チャイナ・インクルーディング・ジャパン」つまり「中国株を抜いて、日本株を入れたアジア株」ファンドだそうで、既存のファンドは存続しつつも各社こうした新たなファンド組成を急いでいるとのことです。 こうした動向に加え、東証がPBR1倍未満のプライム上場企業に向けて出したガイダンスにより、内外投資家に日本企業が「とてもお安い」ことがアナウンスされてしまったわけです。いわゆる物言う投資家、アクティビスト達がこれを見逃す訳がありません。 以上の2点から、私は現在の株高、日本株式市場への資金の流入は決してポジティブとは言い切れない。むしろバランスシートにキャッシュをたくさん留保している日本企業がアクティビストに狙われやすい状況を作りだしてしまっている、と考えています。 この対策としては「対話型」、いわゆるエンゲージメント投資家との連携を取ることが、ひいては会社を守ることに繋がるのではないかと考えています。IR担当者として何かしらの対策を打たなければ、とお考えでしたら弊社にご連絡ください。具体的な提案を致します。 (大石)

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ESG投資最新動向:日本企業が取るべき対策とは?

ESG投資最新動向:ESG投資を謳う資金のインチキが常態化。投資家は距離を置く動き。 日本企業が取るべき対策とは? 多くの主要機関投資家の投資先は気候変動の立場からは逸脱していることが判明」 (出所:Missed Pitch) Many leading asset managers’ investment practices deviate from climate positioning. Source: “Missed Pitch” analysis report, Carbon Tracker Initiative ESG投資と一言で言っても、日本と世界ではその位置づけがずいぶん乖離しています。以下に整理しました。 (1)ESG投資のこれまでの動き、 (2)現在の状況 (3)日本の上場企業のCEO、IROが考えるべき重要論点と対策について (1) ESG投資これまでの動き:ESG投資の欺瞞姓に対する告発が相次ぎその公正性、透明性が問題になりました。 2021年にDWS(ドイツ銀行グループ)とブラックロックのESGサステイナビリティー投資の前責任者が相次いで内部告発を行いました。このあたりから欧米ではESG投資の信憑性に対する疑義・反発が強くなっていきました。内部告発の内容からも判るように。サステイナブルであるという「偽りのラベル」を貼ったファンド(資金)を売る金融機関が次々と顧客(アセットオーナー)をミスリードして来た経緯があります。 2021年9月24日の投稿:DWS(ドイツ銀行グループ)の元ESG運用責任者による内部告発について。 2021年8月27日の投稿:ブラックロックのサステナブル投資の前責任者による内部告発について。 (2)2023年5月現在の状況 サステイナビリティー投資への疑義がアセットオーナーの間で持ち上がってから約2年。現在のESG投資業界を表現するならば「混乱」と言って良いと思います。5月4日発行されたCarbon Tracker Initiatives「Missed Pitch」の分析レポートによると、35の世界のトップ金融機関から構成される、ネット・ゼロ・アセットマネージャーイニシアチブ(NZAM)のうち、25社が本来謳っているはずの気候対策から「逸脱した企業」へ投資していることを明らかにしています。パリ協定の目標とは合致していないと評価された石油・ガス企業の15社合わせて45億ドル以上の投資を保有していると指摘します。添付した画像は、運用資産総額に占める石油・ガス関連企業への投資額ベースのトップ35ランキングです。NZAMメンバーはYesでハイライトされています。これを見てどう思いますか? (3)日本の上場企業のCEO、IROが考えるべき重要論点を以下のように整理しました。 ESG格付けの意義・信頼性。グリーンウォッシュが横行するなか、アセットオーナー、マネージャーは銘柄選択に苦心しています。同時に「サステイナビリティー」と謳う投資からは距離を置くようになっています。 今後予想される、ESG格付、サステイナビリティー投資の形骸化の加速 日本企業が取るべき対策は、①経営者が自ら投資家1人1人とつながり対話すること、②「自社独自」のレーティングで「変化率・改善率」を時系列で開示することです。これは既存のESGデータへの検証として機能するからです。 (大石)

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「上場企業、持続可能性格付けに年間最大50万ドル投資」

「サステナビリティー・コンサルティング会社ERMの報告書によると、格付けの正確性については、企業が提供したデータが誤って分析されているとの不満が多く、調査対象104社の3分の1近くが格付けの正確性に対する信頼度は「低い」「非常に低い」と回答した。ただ、95%の企業が投資家からの要望があるため格付けを取得していると答えた。」(出所:ロイター) 投資家からの開示要望のあるサステイナビリティー格付関連費用に企業がどれくらいお金を使っているのかというと上場企業1社あたり425,000米ドル(約6,000万円)との調査結果が出ました。格付関連費用とはつまりTCFDなどの要件に見合う資料(ESGデータ開示、統合報告書の作成など)を指しています。 「Ask your investor」(投資家に聞いてみる) 日本企業の経営陣、IR担当者としては現在グローバル資本市場で起きていることを念頭に「ESGデータの開示」に対しての自社独自のスタンスを決める必要があります。 自社のスタンスといっても何を開示するべきなのかが分らない。そういう場合は投資家と話すしかありません。データは投資家が投資に踏み切るかどうかを判断するのに使うものです。 それには投資家がどんなデータを探しているのか、そのデータは社内に有るのか、無いのかをまずは洗い直す必要があるかもしれません。外部のプロフェショナルの手を借りるのは投資家が何を求めているのかを把握した後ではないでしょうか?投資におけるリスク(債務不履行可能性 )を 分りやすく投資家に示し投資判断を助けることが格付の 本来の目的のはずでした。 ところが今は、このような混沌とした時こそぜひ「Ask your investor」(投資家に聞いてみる)を実践されることをお薦めします。 まもなく決算発表の時期を迎えます。次のIR面談では「どんなデータがあると投資判断や保有がしやすくなりますか?」という質問から投資家との議論を深めてみることをお薦めしたいと思います。 50万ドルもかかりませんし、トライしてみない手はないと思うのですがいかがでしょう。(大石)

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プライム上場の維持、東証の本気度と企業価値の関係性

「プライム上場維持の猶予期間は3年+1年。区分替えにまつわる東証の本気度と企業価値の関係性」 2022年4月の東証区分見直し当初は東証一部の企業の多くが基準を満たさないままにプライム市場に「移動」しただけの意義に乏しいものに終わった、というグローバル市場からの厳しい評価は記憶に新しいですが、ここに来て新しい動きがありました。 2023年1月30日に東証が発表した資料「論点整理を踏まえた今後の東証の対応」では、経過措置経過後の具体的な取り扱いについて発表しています。 それによると経過措置は2022年4月の市場再編を起点に経過措置3年(2025年まで)プラス、改善期間1年=最大で4年までと経過措置のデッドラインが決まりました。 経過期間プラス改善期間を経て不適合だった企業は監理整理銘柄となり、その後は上場廃止となります。   整理銘柄指定期間の見直し(出典:東証) 一方経過措置企業は、新しい制度が始まってから6カ月間は審査なしでスタンダードに移れるようにするため、現在プライムの基準に適合していない269社のうち約半数ほどがスタンダードに自主的に移動するのではとみる向きもあります。 プライム上場適合の流動性の基準をクリアするため、各社株式の持合い解消やオーナー株の売却などを進めていると聞きます。 株式市場全体としては好ましいことかと思いますが、各社プライム上場維持の意義をもう一度考え、本気度を試されることになりました。 ところで、このニュースを海外のソースで探したのですがほとんど報道されていません。東証の売買代金の60%以上を占める海外投資家からの関心が薄いことのほうが怖いことだと思いました。 これからはプライムに適合した企業とそうでない企業の企業価値の「差」が顕著になるのでしょうか。グローバル市場はどのように評価するか見守りたいと思います。 弊社からIR担当者に提案したいのは、欧米の格付機関のESGレーティングを取りに行くことを目標にするのではなく、上場市場がプライムやスタンダードのいかんに関わらず、自社の企業価値の源泉を投資家にわかりやすく日・英で明文化することです。 (大石) <出典> 東証の暫定組、猶予2026年3月まで 上場維持へ改革急務(出所:日経新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB255QG0V20C23A1000000/ 論点整理を踏まえた今後の東証の対応(出所:東証) https://www.jpx.co.jp/news/1020/fi1l5r00000011qu-att/fi1l5r00000011uc.pdf TSE Transition Period to End in March 2025 https://www.nippon.com/en/news/yjj2023012501047/ Tokyo Pushes to Reform Its $6.5 Trillion Stock Market.…

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ESGはフェイクか?

「ESGはフェイクか?」 善か悪かの二元論ではなく、ESG投資を機能させるしくみをそれぞれの企業が考える時に来ている」 アメリカのTesla社は今年5月に「S&P500のESGインデックス」から外されました。Tesla社、スペースX社CEOのイーロン・マスク氏は、ESGの計測のやり方が不透明だとして「ESGは悪魔」とTwitterで発言し物議を醸しました。今度は共和党幹部から、代表的なESG投資家であるブラックロック社に対しての意見書が出されたことでアメリカでちょっとした話題になっています。共和党幹部の書簡には、ブラックロック社が財務的リターンを重視するのとは異なる「社会的目的」のために行動しているように見えること、Net Zero Asset Managers initiativeなどの気候に焦点を当てた投資協会への参加やスチュワードシップ活動を通じて、企業に化石燃料の廃止やネット・ゼロ目標への適合を強制していること、巨大投資会社の「行動はエネルギー市場の競争力を意図的に抑制し害しているように見える」などの指摘が含まれていました。(出所:ESG Journal) 日本企業にとっても喫緊の課題であるESG開示ですが、米国では「ESG投資」を巡って投資家、気候変動アクティビスト、企業の間の緊張が高まっているのです。そもそも「ESG投資」という定義はマテリアルであるべきですが、実際の投資判断には非財務的な基準が使われていることから「ブラックボックス化」しています。あながちイーロン・マスク氏の主張も嘘とは言い切れないでしょう。 IR担当者としては、これだけ様々な利権を持つ関係者が「ESG投資」というテーマに関与していることを理解しておく必要があります。ESGが正義とばかりに、投資家や当局からプレッシャーをかけられた企業からは反発が起こっています。ESG投資に関しては、今後どのような動きになるのか注視する必要があるでしょう。 日本企業の経営陣もやみくもに「ESG信者」になるのではなく、将来的にESGレーティングが陳腐化したときのための準備が必要です。それには、自社独自の指標を継続的に投資家に開示することが、最大の防御策になるのではないかと思います。一方でESGは善か悪かの二元論ではなく、ESG投資を機能させるしくみはどんなものか智恵を出し合って考えることが必要だと考えます。それが投資家の利益を守ることになり、ひいては健全な資本市場を形成することにつながるからです。(大石) 「BlackRock、気候変動活動家の主張に反撃」(出所: ESG Journal) https://esgjournaljapan.com/world-news/20893 テスラ、S&P500ESG指数から外される-マスク氏はESG批判(出所:ブルームバーグ) https://www.bloomberg.co.jp/.../2022-05-18/RC32J7T1UM0X01 Elon Musk rips 'environmental, social, and governance' scores: 'the devil' https://www.foxbusiness.com/.../elon-musk-rips... Blackrock defends ESG position:米国証券取引委員会(SEC)コミッショナーHester Peirceに現状を聞く(出所: Fox Business) https://video.foxbusiness.com/v/6313623405112#sp=show-clips

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ESG開示の発想転換

ESG開示の発想転換 社会への実質的インパクトで評価するのが最新の流れです(前編) 突然ですが皆さんは家計の収入・支出の管理をどのように行っていますか?私はレシートをアプリで読み取ったりするのも面倒で、家計簿アプリも長続きしませんでした。毎月メインで使っているクレジットカード明細でだいたいの支出の内容を把握しています。結局家計管理をどうやって行っているかというと、銀行の残高を見ているだけです。何にどれくらい使ったかという分析に時間をかけるより、「残高」の増減で普段の支出を調整しています。たまに衝動買いもしてしまいますが、モノを買うときに本当に自分に必要かを吟味すれば、分析するまでもないということに気づきました。20年くらいこの方法を続けているのは、結局手間がかからいことは続くということなのだと思います。手間がかかることは長続きしませんし、支出の分析に時間をかけるより収入を増やすこと(会社員の方なら副業などを考える)のほうがクレバーなのかもしれません。 なぜこの話をしたかというとESG開示においてもデータ偏重ではなく、結果(社会インパクト)で開示をすれば投資家にとって分かりやすいと思ったからです。日本企業のESG情報開示の取り組みが加速する中、ほんとうにそれらの情報が正しい計測方法に基づいて計測された数値なのか、その前提そのものを疑問視しています。(例えば、世界的石油会社の長期債の格付が最上位のAAAから1段階下げたAA-(ダブルAマイナス)という高格付けであることなど。) 日本では当局からのお達しで工場やオフィスのCO2排出量を測ったり、女性の経営陣の数の推移を開示したり、各社膨大なお金をかけてコンサルを雇い「ESG開示」に注力しています。上場企業にとってはある意味『ルール通りやるしかない』ことのように思われます。ただ海外のESG投資の最先端の動向を見てみると、確実に潮目に変化が起きています。ご案内のように金融規制当局が横行するグリーンウォッシュ(金融機関などが科学的根拠に基づかないまま、社会貢献や環境負荷軽減などの効果を謳った金融商品を販売すること)をいかに摘発するかが直近のテーマになっています。 英国の規制当局、グリーンウォッシュに関する新しいラベルと開示規則を発表(出所:ESG Journal) https://esgjournaljapan.com/world-news/22222 ESG投資の実態は “グリーンウォッシュ”にメス<経済コラム>(出所:NHK) https://www3.nhk.or.jp/.../20220610/k10013664211000.html FCA proposes new rules to tackle greenwashing (Source: FCA website) https://www.fca.org.uk/news/press-releases/fca-proposes-new-rules-tackle-greenwashing あと5年後、10年後にはESGの開示情報に基づいた投資判断はされなくなるのでは、と疑っています。なぜなら格付機関や金融機関が使う既存の計測システムでは、その計測プロセスにおいて恣意的な要素が入り込む余地があるため本当の意味で透明性・客観性が担保できないからです。投資家もすでにそれに気づいています。英国のFCA(Financial Conduct Authority) などによる規制の強化の流れはあるものの、確固たる是正がされない限り既存のESGレーティングや格付には意味がなくなる日が来る可能性もあります。 日本企業の経営陣やIR担当者は既存のESGレーティングのシステムが陳腐化したときのための、別の次元でのESG開示を想定しておくことが大事になるのではないでしょうか。 「ではどのように?」については後篇で。グローバルの最新動向を紹介します。(大石)  

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IRトレンド

年の初めに寄せて
皆様にとって健やかで穏やかな一年になりますように。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 元日の地震で被災された皆様、ご家族の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 2024年は元日から日本にとって悲しいニュースが続きました。 このような天変地異を目の当たりにしたときの人間の無力さ、そして普段では当たり前に思っていることがどんなに有り難いことなのかを改めてかみしめています。 東京証券取引所では4日から商いが始まりました。 企業活動も本格的に始動しています。日本経済、ひいては日本企業にとって2024年はどんな年になるのでしょうか。 2023年からの流れから気をつけておきたいことがあります。 それはアクティビストの活動です。 インパクト投資家へのヒアリングで、今年少なくとも2社のアクティビストファンドが日本オフィスを開設すると聞きました。 アクティビストといってもファンド(投資家)だけとは限らずまったく業種の違う企業からの買収を仕掛けられることも可能性としてはあります。 その対策としてどのようなことを留意すべきなのかということが、IR戦略を考える上で鍵になってくると思われます。 どんなスタイルのアクティビストであれ、そもそも事業家ではないため、企業の経営陣とは「違う言語を話す人」と最初から位置づけるほうが良いと思います。 つまり議論の前提が違う。 真摯な対応をして、何度も面談を重ねても、結局理解し合えないことがままあります。 やはりここは「同じ言語を話し」アクティビストの手の内を熟知している、資本市場の専門家にアドバイスを請うのが最も理にかなっていると考えます。 その上で、買収防衛策を使うのか、撤廃するのか、資本政策の方向性をどうするかなど、経営の根幹に係わる部分での議論を社内で深めていく必要があると思います。 出所:Bloombergニュース  アクティビストに目を付けられる企業に共通している特長があります。それは開示が乏しいことです。一見矛盾しているように思えますが、情報開示をしてしまうと、その情報がまんべんなく公平に世の中に行き渡るため「潜在化していない情報の価値」がなくなるためです。開示を進めるほど、特に敵対的な買収を仕掛けようとするようなアクティビストへの対策となるのです。上場企業のIR担当者にネガティブなニュースほど、迅速な開示をお勧めするのはそのためです。 以下の円グラフは米国の上場企業に向けてアクティビスト投資家がどのような株主提案をしてきたかを示すものです。米国と日本企業を単純比較は出来ないものの、参考になるかもしれません。 The most frequent activist investor demand involved in 28% of campaigns since 2006 has been for companies to separate its business. 2006年からの統計によると、最も積極的なアクティビスト投資家のうち28%が企業に「事業の分離」を求めてきた。 アクティビスト投資家から要求された価値創造の施策(2006年以降、2,142社累計) Value creation demands from activist investors( 2,142 campaigns since 2006) Source: FACTSET,…
ESG投資は今どうなっていて、どこに向かっている?
以前「ESGは死んだ」という英国FTの記事を紹介しました。 そして、日本のメディアでも同様の報道がありました。 「ESGが消えるべき3つの理由 米で政治化、欧州は常識」(出所:2023年7月8日、日経新聞) 10月23日のFTで、改めて「ESGは死んだ」系の記事が紹介されています。タイトルを訳すると「ESGは救いようがない。早く消えて」といった感じでバッサリと切り捨てています。 ESG is beyond redemption: may it RIP by Aswath Damodaran (Source:October 23 2023 edition of FT Online.) 欧州、米国では2019年8月にDWS(ドイツ銀行の資産運用部門)、続いてブラックロックのサステナビリティ投資責任者による相次ぐ内部告発を皮切りに、欧米においては金融機関による相次ぐグリーンウオッシュ、企業によるバリューウオッシュがメディアに取り上げられています。ESGへの逆風が吹きまくっています。また不正をせず、ルールを守って真面目にコツコツやってきた投資家や企業の間にも「ESG疲れ」が見られます。 でも、ESGは不要だ、と切り捨ててしまって良いのでしょうか。ESGは今どうなっていて、どこに向かっているのでしょう。 IR担当者としては、グローバルにおけるESG投資の大まかな流れは常にアップデートしておくことをお勧めします。投資家との温度感がずれてしまうからです。インパクト投資家からのヒアリングを行い私の見解をまとめてみました。 まず、ESG不要論に飛びつく前に、なぜこのようなESG不信が起きたのか、要因を分解して考える必要があると思っています。 ①ESG投資は「死なない」:過去25年以上にわたって概念として進化を続けてきたESG。概念そのものが急に「死ぬ」、「消える」とは考えにくい。ESG投資は進化の途中にある。 ②ESGデータの疑義性:要因分解をすると、問題は格付機関が投資家に提供する「ESGデータ」の疑義性にあるのであって、ESGのコンセプトそのものが問題なのではない、ということです。問題は、大手格付会社のESGレーティングの計測方法は明らかにされていないことから、透明性・公平性の担保が相当難しい点にあります。ESGデータの疑義性と、ESG投資の原則を混合して議論するのはちょっと違うと思っています。 ③ESGデータの透明性を担保し、投資家が安心して投資判断に使えるようにする必要があり、misrepresentation (あたかもそこにあるかのごとく装うこと)が出来ないルール作りが急務であるということです。欧米では早くも業界ごとのESG開示に係るルールづくりなが進められています。 ④ESGファンドの選別が起こる 過去10年でグローバルの巨大投資家などが「環境や社会に良いことをしている」と旗を振って資金を集めた結果、世界の総資産の3分の1をサステナビリティ関連のマネーが占めています。短期的な利益獲得をねらうようなファンドが規制強化を嫌気し次々撤退していくのも、ある意味予想が出来たことかもしれません。 ⑤結論:淘汰を生き抜くのは「本物」だけ 上記のような流れから、私は現在ESG投資は、今曲がり角にあると考えます。淘汰のさなかにある、ということです。約半数のESGファンドが2年未満の設定をされており、順次繰り上げ償還されているとブルームバーグは伝えています。利益を確定したら早々に退散する(「なんちゃってESGファンド」とでも呼んでおきましょう)の数が新たに設定されるESGファンドを上回るとのこと。 今後、ESGを謳うファンドに課されるルールはさらに多くなることから(下記参照)それでもESGファンドとして残存する選択をしたサスティナブル投資家には志があるという証左になるのではないでしょうか。 志を持つ「本物」だけが淘汰を生き抜いていくと、大石は考えます。 ブーム去り繰り上げ償還相次ぐ、ESG投信に「異変」-設定2年未満も (出所:ブルームバーグ) [世界のESG規制]気候変動や人権など新ルールが2倍超に (出所:日経ビジネス)